どうにもこうにも~出会い編~

「石原さんは大学で何を学んでいるんですか?」

 電車に乗ってから先に口を開いたのは西島さんだった。私たちはドアに一番近いところの席を取ったが、この日も西島さんはやはりしっかりこぶしひとつ分ほど私と間を空けて座っていた。

「英語学とか異文化コミュニケーションとか勉強しています」

「そうなんですか。すごいですね。私は学生時代、英語は苦手でした」

「実際英語学なんて実生活には役に立たないですけどね。西島さんは学生時代何学部でしたか?」

「私は経済学部でした。つまらないもんです。まぁ経済学部を出たおかげで今の会社に勤めることができたのですが」

「私にはビジネスとかよく分からないですけど、英語学なんかよりずっと役に立つのはよく分かります」

 電車に乗っている間、私の学校のことや西島さんの会社のことを話した。西島さんは某有名商社の事業開発部部長を務めていることが分かった。きっと部下に慕われる上司なんだと思う。責任感が強くて、頼りがいのある上司なんだ。

「では私はここで」

 もう少し、話していたいと思っていたのに、あっという間に西島さんの駅に着いてしまった。