「……いじわる……」

「……意地悪だよ、俺」


「よく知ってるだろ」という呟きとともに、顔を寄せられる。

わたしは諦めて、応えるようにおーちゃんの首に腕を回した。

頬に触れた唇の湿った感触が、ゆっくりと移動していって、耳元を掠める。

舌が輪郭をなぞるように滑った後に、優しく歯を立てられた。

思わず、首を竦めながらぎゅっとしがみついた。


おーちゃんの首元に顔を埋めると、朝の香りに混じって、大好きな香りがわたしの鼻をくすぐる。

見上げれば、霧のように流れ込む光が、おーちゃんの髪を金色に照らしていて。

窓際では、閉まったカーテンに、ベランダの柵に止まった2羽の雀の影が、楽しそうに映っていた。


……こういうのを、幸せっていうんだろうな……。


わたしは、ぼんやりと思った。


……なんか、泣きそう……。


どんどん火照らされていく体に、胸がいっぱいになる。

そっと、震える息を吐き出した。