「放課後、先生の手伝いとか。なんの拷問」
「ドンマイ」
「見捨てないでー、亜依」
「ごめんね? バイトに遅れたら店長怖いから」
バイトなら、引き留められないな。
「失礼しまーす」
数学準備室の扉をノックして、開く。
「来たか」
中にいたのは数学教師、佐々木だった。
「なにを手伝えばいいですか」
「伊森が課題を忘れるなんて。珍しいじゃないか」
「……すみません」
これまで無遅刻無欠席でやってきたし、課題だって一度も忘れたことなかった。
頭も要領もいい方じゃない分、こつこつ真面目に生きてきたんだ。
「やってる途中で。寝ちゃいまして」
「まあ。座れ」
この部屋やだな。
ほこりっぽい。
「伊森は父さんと2人で暮らしてて。今は海外に行かれてるそうだな」
担任から聞いたのかな。
「一人で大変だろう」
どこまで知ってるんだろう。


