「おもしろいか。それ」
「全然」
「将来数学者にでもなんの?」
「まさか」
課題をする、わたし。
それを横から眺めてくるナナセ。
集中できないんだけど。
やっぱり暇なの?
「台詞覚えたりしなくていいの?」
「もう入ってる」
「何度も読んで必死に暗記するものかと」
「一度目を通しゃ十分だろ」
天才かよ。
「中学まではフツウに学校通ってたの?」
義務教育だし。
「……あんま」
「子役の頃から忙しかったんだ」
「単純に学校って場所が肌に合わなかっただけ」
なにそれ。
不登校だったの?
「それでよく高校生演じられるね」
「意思免許なくても医者の役やるヤツもいれば。人を殺したことがなくても殺人犯を演じるヤツもいるだろ」
「それもそうか」
やっぱり自分以外の誰かになれるって、すごい。


