「ファンを喜ばせることができるなら、いいんじゃないの?」
「バカか。俺のファンがわくのは当然だ」
これは……自惚れというよりは、志が高いのかな。
「印象には残ったよ」
「は?」
「歩き方から普段と変えててたよね。あとは、台詞がないシーンでも気を抜いてないっていうか」
本気で役に挑んでることが伝わってきた。
悔しいけど、芝居をしてるときのナナセには不思議な魅力がある。
華もある。
普段の傍若無人っぷりから想像できないようなね!
「作者も満足してんじゃない? 自キャラに魂を吹き込んでくれたのが七瀬柚季で」
「……お前。俺のことよく見てるじゃねえか」
「べつに見たくなかったんだけどね」
「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」
「好き?」
「は?」
「仕事」
「……そりゃあ」
「社会に出たこともなければ、周りに世話になりっぱなしのわたしからしたら。キミは十分立派だよ」
わたしへの態度の悪さはさておき。


