――――なんだこの状況は。
「どうした。もう音をあげんのか」
「自分は自転車のクセして」
帽子とマスクしてるし夜とはいえ、有名人が平然と散歩なんてしてていいの?
「ズルい」
「なあ」
「……なに」
「そんな魅力なかったか」
「え?」
「俺の蓮は」
蓮というのは、さっき見たドラマの役名だ。
「俺より上手くできるヤツ地球上のどこ探してもいないって確信してんだけど」
「そこは原作知らないからなんとも言えない」
「一ミリもときめかなかったのか」
「ヒロインの女の子が可愛かったかな」
「やっぱお前……そっちの……」
「べつに気にすることないでしょ。わたしが蓮というキャラに特別惹かれないのは、ああいうキャラを好きな人もいれば苦手な人もいるからだし」
「俺のこと好きなヤツだけ喜ばせてるようじゃ。半人前だろ」


