「ごめん、凛が社長とは付き合えないって言うから、つい身分を偽った」

「ひどいよ、嘘つくなんて……」

私は廉の腕を振り払い、部屋を出た。
涙が止まらなかった。
廉はその場に呆然と立ち尽くした。

私は現実と嘘であってほしい気持ちの狭間で苦しんでいた。
社長は会社を支えていかなければならない。
一緒に共に歩いていける立場の女性でなくてはならない。
それには取引先のお嬢様が一番相応しい。

私は自分ではないと言い聞かせた。
涙が溢れて止まらなかった。

その頃、俺は嘘をついた事を凛に謝り、もう一度やり直したいと告げる為、凛のアパートに車で向かった。

何度か居酒屋からアパートまで送って来た事があり、場所は分かっていた。

「凛、俺はお前を失いたくない、社長の座を捨てても、お前との人生を選ぶ」

俺は心に誓った。
アパートに着くと、インターホンを鳴らす。

「凛、開けてくれ、俺だ」

応答はない。