結ばれない運命〜愛する人は空の彼方へ〜

「凛、あいつはまだ独身だぞ、結婚歴は無い」

「そうなんですか」

「十年前の婚約者は取引先のご令嬢で、取引先と契約破棄になったそうだ、相当の違約金を払ったらしい」

私の頭の中で当時の事がぐるぐる回り始めた。
その時、彼は私を引き寄せて抱きしめた。

「凛、今あいつからやり直そうって言われたら、凛は俺に背を向ける、そんな事わかってる、でも俺だけ見てくれ」

彼は弱々しいやっと絞り出した声で私に囁いた。

彼は何を言っているの?
私がまだ廉を愛してるって事?
そんな事ないのに……
私は颯に心を奪われてる、唯一年後の別れの事実に戸惑っているだけなのに……

そんなに私は器用じゃない。
廉を愛しながら、同情だけで颯に抱かれる事なんて出来ないのに……

「颯さん、廉との事は終わってます、私は颯さんが……」

と言いかけた私の唇を彼は塞いだ。
まるでその先の言葉を聞きたくないかのように。