妻と別れてから、恋愛とは程遠い生活を送っていた。
そんなある日俺はスマホを落とした。

「まいったな」

「店長のスマホにかけてみたらどうですか」

「よし、そうしよう」

俺は自分のスマホにかけてみた。

「もしもし」

これがのちに俺が本気で惹かれた女性、涼風 凛との出会いだった。

凛は恋愛にとても臆病になっていた。

それは三十歳の頃のトラウマが原因だった。

それでは、十年前に遡るとしよう。


私は涼風 凛 三十歳。この頃知り合ったのが、玉森コーポレーション社長玉森 廉である。
 
廉は当時二十八歳若き社長と期待されていた。

『凛、今日も居酒屋?今度ご飯付き合ってよ』

そうメールをよこしたのは、親友菜々美。

菜々美は既に既婚者で、雑誌の編集部に勤めている。現在妊活中。

『うん、もちろん付き合うよ、またメールちょうだい』

私はバリバリ仕事をこなしていた。

居酒屋で仕事終わりに一杯呑むのが日課になっていた。