「後、百合絵ちゃんのことも納得させなくてはいけないな」

「わかったよ」

俺は病院を後にした。

まず、俺は百合絵に会いに行った。

「廉さん、嬉しい、私との結婚を前向きに考えてくれるんですか」

百合絵は満面の笑みを浮かべて微笑んだ。

「ごめん、お前とは結婚出来ない」

百合絵の表情は一変し、笑顔が消えた。

「どうしてですか?」

「俺は凛以外の女とは結婚しない」

百合絵の目が細くなり、憎しみの表情へと変わった。

「わかってくれ」

「わかりません、私は幼い頃より廉さんと結婚するんだと父に言われて育って 来ました、だからその道を外れるわけにはいきません」

「お前にはもっと相応しい男がいるよ」

「廉さん以外にはいません」

「悪いな、もう連絡しないよ」

俺は百合絵に背を向けた。
この時百合絵は諦めていなかった。
その情熱が俺にではなく、憎しみに変わり凛に向いていた事を、この時俺は気づかなかった。