檸檬色の日々



睡魔は感じるけれど、眠らなくても平気な身体。
空腹は感じるけれど、食べなくても平気な身体。

暴力を受けたって、傷を負ったって、メンテナンスを怠ったって、壊れることはほとんどない。


壊れるとしたらそれは、寿命が来た時、或いは強制終了ボタンを押された時だけ。


どうしてヒカリが身体の軋みを心配したのか。それはこの国ではカラレスを“長持ちさせるため”にメンテナンスを定期的におこなうことが一応定められているからだ。

だけど、王族たちは知らないのか、そんなもの守っている人間はごく一部の裕福な家庭だけ。取り締まる人もいない。



【 カラーレス 】


無色で出来たそれは、所謂ロボットというやつだ。



「カラレスの分際で…なんなのよこの服!!!」


皮膚を叩かれ、床に打ち付けられる。最後にメンテナンスを受けたのは説明書に記載された3年より遥かに前のこと。咄嗟に手をついた拍子に肩から腕がぼろんと取れてしまった。

青白い肌。

人間の皮膚に限りなく似せたその中身は、オイルが足りなくなり、螺子の歪んだ銀色のガラクタ。


「それは…」

「アンタ、まさか人間の男と関わってるんじゃないでしょうね…?」

「……っ」


人間、どころか──── 王子様と毎日会ってます。



なんて、バレたら、私は。

もういっそ壊れたほうがいいんじゃないかな。そう思うのに、いっちょまえに恐怖を感じるんだから畏ろしい。


カラレスを創ったのは誰なんだろう。
どうして、人間に似た臓器を中に容れたんだろう。


カラレスのメンテナンスを義務づけたのは、まだ幼い頃のヒカリだったと聞いた。

どういう経緯があったのかは知らない。それでも、ヒカリは私と出会うより前からカラレスという存在に易しかった。


だから、せめて、まっとうしたい。

短くなっていてもいいから、寿命を。

遠くからでいいからヒカリを見ていたい。知っていたい。


だけどそれすら許されるような身分じゃない。