檸檬色の日々



ねえヒカリ。

私がきみをそう呼ぶこと、きみは不思議がっていたけれど…私はただきみの本当の名前を呼びたくなかっただけ。


この国の末の王子様。
その姓を継ぐ彼の名前を。


カラレスを雇わなくたって身の回りの世話をしてくれる人間がたくさんいる。王族が暮らすお屋敷のある高台には服も食材も本もお薬も何でも揃えられるよう最高ランクのお店が並んでいるって聞いた。

それでも彼は無邪気に下界に降りては、国や街の様子を感じに訪れ、人々と会話をし、置かれた身分に気取ることなく距離の近い王子様として誰からも愛されている。


私は……そんなヒカリがまぶしくて。
街に来られるたびに、こっそりと、瞬きも惜しむくらい見ていた。


初めて話しかけられた日。
ひまわりという花の名前を教えた日。

本当に偶然だったはずの出会いのせいで、私は、きみを、王族だと認めたくなくなった。


ただでさえ、私はカラレスなのに。

ふつうの人間とさえ、目線を合わせて会話をしてはいけない存在なのに。



高い背を屈めて、魚を掬いあげるような、星の色の瞳が私を捉えた。

あの瞬間から──── 私は、この国で一番重い罪を犯している。