檸檬色の日々





「この国を出て一緒に暮らそうよ、サン」


その日のヒカリは、はじめからどこか落ち着かない様子だった。


だけど何度どうしたのか聞いてもはぐらかされてしまうので聞くのをやめ、お昼休みが終わる時間だと職場に戻ろうと踵を返したところで、腕を掴まれた。

振り向くといつになく真剣な眼差しで、先の台詞。


おどろいた。
すぐに泣きそうになった。

心臓が震えてる気がする。


今すぐその腕のなかに飛び込みたい。ぎゅっと抱きしめて、手を繋いで、このひまわり畑を通り過ぎて、知らない場所へ行きたい。

きみとなら、何処へでもいける。何でも捨てられる。何でも縋りつける。


だけど……きみは、ヒカリは、そうじゃない。



「そんなこと、できるわけないじゃない」

「できるよ。おれはサンとなら何処へでもいけるし、何でも縋りつけるし、何でも捨てられる」

「捨てちゃだめよ。ヒカリは、この国を、家族を、自分自信を…捨てたらいけないの」

「おれの人生はおれが決め……」

「私は──── カラレスなのよ。きみと私が一緒にいることは誰からも許されない。たとえ自分の人生でも、自分で決めてはならないことだってあるわ」


腕を振り払う。

その拍子で身体が、ギギィ…と醜い音をたてた。


「その音……やっぱり、ちゃんとメンテナンスを受けさせてもらえてないんだろ…!」

「そんなことないってば」

「なあ、前から何度も聞いてるよな?カラレスのメンテナンスはこの国の義務だ。それを怠っている家庭は裁かれる。サンは何も悪くないんだよ!」

「ヒカリは何も知らないだけよ。…おばさまたちは悪くない。私が悪いの」

「サン…!!」


これ以上は言いたくない。

私のことを、彼には何も知られたくない。


その一心でひまわり畑に背を向けた。