食堂の白井さんとこじらせ御曹司

「あの、私は学生じゃなくて、この大学で働いているので、ごめんなさい」
 ぺこりと頭を下げる。
 昨日道案内してもらった恩はあるけれど、大学生の代わりは務まらない。
「え?あ、そうなの?」
 女学生さんが髪をさらりと落としながら、頭を横に傾け、私の姿を足先から頭の上まで眺めた。
「えーっと、もしかして年上なのかな?それとも同じくらい?あ、私、大学院の1年生だから、23歳って言いたいところだけど、留学で1年休んでるからもう24歳なんだ。と、話してる暇もないや。別に学生限定ってわけじゃないから全然大丈夫、時間があるなら、頼めないかな?」
 24歳ですか。
 そうか。院生もいるから、そういう子もいますね。あ、時々留年をギリギリまで繰り返している学生さんもいるようですから、同じ年くらいの学生さんもいたはずですね。
 でも、目の前の女学生さんよりは、私のほうがずいぶん上なのですが、そう見えないのでしょうか?
 ノーメイクだから?よく見れば眼尻の皺も、肌のハリも……。
「何を、ですか?」
「あ、そっか。言ってなかったね。飲み会なんだけど、メンバーが足りなくて」
 飲み会?
「もしかして、合コンですか?」
 今日の私もいつも通り仕事スタイルです。
 ノーメイクに、髪の毛はひっつめていて、黒ぶち眼鏡。それにジーパンにTシャツに黒のでっかいリュック。
 男受けから目いっぱい遠い恰好だっていう自覚はあります。
 なんで来たの?って言われるレベルです。
 引き立て役として連れていきたいのでしょうか?
 女学生さんは、とてもきちんとオシャレをしています。
 茶色の髪はゆるふわカールで毛先が揺れていてかわいい。
 大きな目をより大きく見せるアイラインにもにじみがなくきれいです。
 眉もしっかり整えてあるし、赤すぎない赤い口紅は艶があります。
 もともときれいな顔立ちに、さらに化粧で何ランクもきれいになってるという感じ。女の私から見てもかわいいです。
 引き立て役なんていなくたって、十分だと思うのですが……?
「そうなの!相手は社会人でえっと、飲食代は持ってくれるから、座っていてくれるだけでも助かるの!」
 飲食代タダ?
「もともと男5人女4人と人数に差があったのに、さらに減って、女性3人とかじゃさ、さすがになんていうか……」