そう心の中で笑いながら手を出したら。
「はっ、」
こちらが力を入れるよりも先に、彼女に強い力で手首を引っ張られた。
嘘だろ──。
全身が前のめりになって。
「ちょっ……!!」
このままじゃ目の前にいる美乃里ちゃんに当たってしまう、そう思って、
瞬時に彼女を避けるようにしたら重心が右に一気に傾いて。
バッッシャンッッ!!
あっという間に盛大に全身が濡れた。
つっっっめた。
「……ふっ」
隣から聞こえた漏れ出てる笑い声。
最悪。
しりもちだけで済んだ美乃里ちゃんより濡れてるってなに。
助けてあげようとしたんだけど。
人の親切をなんだと……。
「今のわざとだよな」
「……やっ、その、」
肩が震えてる。笑いすぎ。
「美乃里ちゃん」
「まさか、そんな盛大に転ぶとは思わなくてっ、ふはっ」
はぁ?!
てめぇを避けたからこうなってんだよ!!
そう怒鳴ってやろうと声を出そうとした瞬間、
「わー!おねあちゃんと果歩、ふたりそろってびしょ濡れだ〜」
柚巳くんの軽快な声が聞こえた。



