明らかにぎこちなさすぎる動きに、嫌な予感がした。
「よし!取れた!取れたよ里柚!」
はしゃいでスリッパ を掲げる美乃里ちゃん。
なんとか取れたみたいで内心ホッとした瞬間。
「……わっっ!!」
「危なっ───!!」
バッッッシャンッッ。
やっぱり……。
パシャパシャと音を立てて歩きながら、川の中に座り込んでいる彼女の前に立つ。
「冷たい〜……」
「美乃里ちゃん、運動苦手なの?」
「はっ、なんで。べつに」
俺を見上げた彼女の上目遣い。
正しくは、安定して睨みを効かせた上目遣いなのだけど。
「スリッパ 追いかけてるときの歩き方、びっくりするぐらい変だったから。一瞬、川の妖怪かと思った」
ちょっとからかってそういうと、みるみるうちに赤くなるその顔がおかしい。りんごじゃん。
「ほら、手」
かわいそうだから助けてあげる。
お尻びしょ濡れでしょ。
嫌いな奴の手を借りるってどんな気分よ。
さぞ、屈辱的だろう。



