「いただきます」
「はい」
木製スプーンで掬った雑炊を美乃里ちゃんが俺の口元へと向ける。
パクっと一口運んだら、かつおだしの香りがフワッと鼻を抜けて。
たまごの優しい甘さと相性抜群。
「……んんまぁ」
暖かく全身を包み込んでくれるような。
「よかった……」
「……ずっと美乃里ちゃんの手料理食べてたい……無理、もうコンビニ飯食えない。ねぇ、美乃里ちゃんこれから毎日俺んち来て飯作ってくんない?ご褒美はちゃんとあげる。俺からの熱いキス」
「バカ……」
わかってる。半分冗談で半分ほんと。
美乃里ちゃんには抱えているものがたくさんあって、俺だけを相手にする時間はそんなにない。
双子の柚巳くんと里柚ちゃんが少し、いや、だいぶ羨ましい。
「……ていうか、これからもうちに来てくれたらいいよ。バイトない日とかいつでも」
「え、いいの?」
「うん。……ふたりも喜ぶし、」
「美乃里ちゃんは?」
そうちょっといたずらっぽく聞けば、サッと目を逸らされて。
「っ、よろ、こぶ。……多分」
なんて言うから。
「はい、美乃里ちゃんが俺のやる気スイッチを押しました」
そう言いながら彼女の持ってたスプーンを雑炊の入った鍋の横において。
「はっ、ちょ、ご飯まだっ」
「次はこっちをいただきます」
「なっ……っ!!」
彼女の唇を奪った。



