〈果歩side〉
フワッとだしのいい匂いがして、ゆっくり目を開ける。
あーーまた寝てた。
学園祭が始まる前の数日。
自分がなにを食べているのかも、しっかり寝れているのかもわからない状態はそりゃ続いていたけれど。
こんなんなるまで、美乃里ちゃんのことで必死だったんだな。笑える。
見覚えのある天井。
かすかにする畳の匂い。
落ち着く。
「……お、おはよう」
控えめな声がして瞳を動かせば、俺のすぐ横に美乃里ちゃんが座っていた。
え。いつからそこにいんの。
目が覚めて一番最初に好きな子の顔が見れるとか。幸福か。
自分が美乃里ちゃんにすげぇ溺れてるのを実感する。
「……美乃里ちゃん。ごめん、俺ほんと、」
昨日、車の中で剛さんと話したのは覚えているけれど。
家に入ってきてからの記憶が曖昧すぎて。
どれだけ迷惑かければ気が済むんだ。
「水牧くん、ご飯食べられる?一応、雑炊作ったんだけど」
「……えっ」
泣かすつもりなの。



