「……まぁでも、ほんとおめでとう。水牧くんが寝てる間、月本さんに色々聞けたしよかった。アズコン優勝も、改めておめでとう」

「先輩のおかげです。あんま言いたくないですけど」

「ふはっ、ひとこと余計だなー」

ふたりの会話にちょっとヒヤヒヤしていたけれど、

横目で見た善先輩の表情がすごく優しくて。なんだかんだ仲良いんだとわかる。

「じゃあ、俺は帰ろうかな。月本さん、水牧くんに泣かされたらいつでも俺のとこおいで」

「えっ、」

「あ、ふたりとも明後日の打ち上げ、ちゃんと来るんだよ?」

善先輩はそういうと、私たちに軽く手を振って行ってしまった。

先輩の背中を見送っていると、フワッと甘い香りが鼻を掠めて。

空気が動いた。

引き寄せられた肩に、心拍数が上昇する。

「泣かせないから。行かないでよ」

「っ、な、行かないよ」

さっき触れ合ったよりも熱い彼の手。
全身が熱によって火照っているのがわかる。

「ん。ごめんほんと。さっそく面倒かけちゃって」

「……っ、そんなことない。水牧くんの寝顔、見れたし」

「っ、」

私のセリフに、彼が一瞬目を見開く。