その瞬間、会場全体が一気にどよめいて、
その日一番の歓声だったと思う。
「……っ、ヤバ」
すぐに唇を離せば、静かにそう呟いた水牧くんとバチッと視線が絡む。
そんな彼の耳が赤くなっている気がして。
一瞬、私から目線をそらした水牧くんが、ふたたびこちらに目を向ける。
「よくできました」
目を細めてニッとあげた口角。
そんな表情にさえ、胸が鳴ってしょうがないなんて。完全に病気だ。
「さ、もう一度」
とつぜん声色を変えた水牧くんが、そう言いながらフワッと私を下ろす。
「先ほどのわたしの質問に答えてくれるかな?お姫さま」
「……っ、」
こちらに手を差し出した水牧くんは、完全に王子さまモードに戻っている。
「これから先ずっと、わたしはあなたと共にいたい。一緒にわたしのお城に来てくれませんか?」
どうしてだろう。
ただの演技に決まっているのに。
その瞳があまりにも真剣に見えて、胸がギュッと締め付けられる。
よくわかんないけど、すごく目頭が熱くなる。
私の答えは、決まってる────。
あの頃とはもう違う。
たった一つの短いセリフ。
「はいっ、喜んでっ」



