「かーほ」
「っ、へ……」
声がして目線をわずかにあげれば、すごく至近距離に彼の整った顔があって、息を呑む。
「……俺のこと、名前で呼んで」
その声に、ドクンと胸が大きくなって。
……なに、これ……。
でもこのままじゃいられないから。
どうにか降ろしてもらわなくちゃ。
「っ、か、果歩、おろしてっ」
恥ずかしさで死んじゃいそうだ。
こんなところで、水牧くんのことを下の名前で呼ぶなんて。
「ふっ、いやだね」
っ?!
「はっ?!ちょ、」
そんなの意地悪すぎるよ。
「そんな真っ赤な顔でいわれても、全然説得力ないから」
そう、彼がニコッと笑った瞬間、会場がさらに黄色い歓声に包まれた。
「そんなに降ろしてほしいなら、」
「……っ、」
みんなに聞こえない小さな声が耳元に触れる。
「……美乃里ちゃんの方からキスしてよ。ほっぺでいいから」
「はぁっ?!」
正気かと、目を見開いて彼を見れば、得意の笑顔を向けられた。



