「ちょ、水牧くん?!」
思わず彼の名前を呼んでしまった。
『王子さまとお姫さま』
ランウェイを歩いている間、私はそうでないといけないのに。
けど、そんなことは気にしないと言わんばかりに、会場が一気に湧き上がる。
まさかこんな公衆の面前でお姫さま抱っこされてしまうなんて。
思っても見なかったいきなりすぎる事態に、緊張よりも恥ずかしさで顔が熱くてしょうがない。
本当はこのまま、舞台の中央から伸びたランウェイを2人で並んで歩くはずなのに。
私を抱きかかえたままの水牧くんが、堂々とランウェイを歩き出した。
「ちょっ、下ろして、水牧くん!こんなの台本にっ……」
ちゃんとセリフを言えるか、ちゃんと歩けるか。
そんな不安は一気に吹っ飛んでしまい。
今は、今すぐ彼の腕の中から離れたくてしょうがない。
たくさんの人に……この姿を見られているなんて。
観客を見ることができなくて、水牧くんの胸に顔を隠す。



