私たちの衣装のテーマは『おとぎ話の王子さまとお姫さま』
お姫さまなんて、この私に似合うわけがないと思っていたけれど、
コンセプトを決めるのはスタイリストの仕事で、それは絶対というルール。
身体が自分のものじゃないみたいに重くて。
動きはぎこちなくてカチコチになりながら、舞台の真ん中で私を待っている水牧くんの方へ向かって歩く。
お客さんのことを考えないように。
まるで今、私と水牧くんふたりだけかのように。
意識を彼だけに集中させる。
心臓のバクバクした音と緊張は史上最高にマックス。
あと、3歩が、2歩がすごく長く感じて。
そんな中、やっと舞台の真ん中に着いたとき。
目の前に立つ彼が、柔らかく微笑んだ。
そして。
「あなたのような美しい姫を、わたしは見たことがありません。一緒にわたしのお城に来てくれませんか?」
と、テーマに合わせたセリフを吐いた。



