『そして!!最後に登場するのは、このコンテスト1番の注目ペア!!果歩&美乃里ペアです!!』
最高潮に盛り上がった司会者の声と、うわー!と叫ぶお客さんたちの声。
「……っ」
足がすくむ。
特に長ゼリフがあるわけでもない。
たった一言だけ。
あの頃と違うのはわかっている。
でも……。
慣れない高いヒールに着たことのない重たいドレス。
つまずいて転んだらどうしようとか、水牧くんの足を引っ張ったらどうしようとか、
どんどん最悪な状況を想像してしまって。
でも……。
ゆっくりと深呼吸して顔をあげれば、正面に立つ水牧くんと目が合った。
その瞬間、彼が微笑みかけてくれた。
そして……。
(だいじょーぶ)
口パクでそう言って、ピースサインを向けてきた。
水牧くん……。
目の奥が熱くてしょうがない。
そうだ。
あの時とは違う。
私は一人じゃないから。
うん。
大丈夫。
大丈夫。
「3秒前」
隣からスタッフさんがカウントが聞こえて。
「3、2、1、どうぞっ」
私は大きく一歩を踏み出した。



