「み、水牧、……くんっ?!」
「大丈夫だから。俺、その話なら多分、剛さんから聞いた」
「えっ」
パパから?
パパったら、水牧くんにそんな話まで……。
私のことを抱きしめたまま、水牧くんが続ける。
「小3の頃の学芸会、だっけ?」
「うっ、うん……」
耳に届く彼の声がうんと優しいせいで、さっきよりも落ち着いている気がする。
「あの時は、舞台の上で美乃里ちゃんひとりだったでしょ。……でも今は───」
ゆっくりと肩を離されて、ふわりと笑った水牧くんと瞳がぶつかる。
「俺がいる」
「え、」
「どーよ。嫌いだった男に抱きしめられた気分は。緊張とかそれどころじゃないっしょ、」
「……っ、」
そりゃ、緊張よりも目の前にいる水牧くんへの胸の高鳴りがいちばんで。
一瞬、震えていたのを忘れていた。



