「え、美乃里ちゃんクレープ食べたことないの」
中庭に着いて、クレープの屋台を見つけ列に並んで。
私にとって今回が初クレープであることを伝えると水牧くんに驚かれた。
「だって、高いから」
水牧くんは、友達とか、女の子たちとか、何度か人と食べたことあるんだろうな。
そう思うと胸の辺りがチクッと痛い。
私が知らないことを水牧くんはきっとたくさん経験している。
「じゃあ、好きなだけトッピングとか選んでいいよ」
「……えっ?」
「おごり」
「いや、」
「美乃里ちゃんと違って俺、バイトしてるから。金あんのよ」
「いやいや、そんなのっ、私自分で───」
そう言いながらポケットに手をかけたのと同時に、水牧くんが口を開いた。
「美乃里ちゃん、財布持ってないっしょ」
「あっ、」
そうだ。
今着てるワンピースのポケット、スマホも財布も入らないから萌ちゃんたちに預かってもらってて……。
唯一入ったのが、さっき菱田くんからもらったチラシとハンカチぐらい。
今の私、完全に手ぶら状態だ。



