心臓がうるさい。
「……美乃里ちゃん、今日、……俺と一緒に、回って欲しい」
「え……今なんて、」
「何回も言わせないでまじで」
「っ、い、いいの?」
『いいの?』
美乃里ちゃんの口からそんなセリフが聞ける日が来ると思うかよ。
……泣きそう。
「そんな格好でひとりでうろうろされたら気が気じゃないから」
そう言えば、美乃里ちゃんはぽかんとする。
この顔、意味わかってないな。
アズコンに選ばれるぐらいなんだから、少しは自分の顔の良さを自覚してほしい。
「あーも。かわいすぎるからヤローに捕まるぞってことだよ。だから俺が見張るって言ってんの」
女の子には今までさんざん、挨拶のごとく『可愛い』を言ってきたのに。
美乃里ちゃんに向かってだとこんなに心臓破裂しそうになんの、もう完全に病気だ。



