昼休み。

少し外の空気を吸って頭を冷やしながらご飯を食べようと校舎の裏へと向かう。

美乃里ちゃんを傷つけることは剛さんを傷つけることになる。

泰生の言う通り、俺の方が大丈夫ではなかった。

剛さんだけじゃない。柚巳くんや里柚ちゃんだって傷つけたくない。

そして……なによりも。

美乃里ちゃん本人の傷ついた顔を、もう見たくないと思った。

あーー。
ほんと俺らしくない。

歩きながら大きくため息をついて、建物の裏へと曲がりかけた時だった。

「ごめんなさい。こんなヒールの高いの履いたの初めてで……」

は?
この声。

聞き覚えのある声がした。

一瞬、彼女のことを考えすぎてしまったせいで聞こえた幻聴かと思ったけど、

「いいよ、そのための練習なんだから」

もうひとり、最近よく聞くようになった声がして確信に変わった。