湯前先輩が俺たちのスタイリスト担当になってからだ。

美乃里ちゃんの様子がおかしくなったのは。

俺といるときなんかよりもうんと楽しそうで信頼しているようで。

そりゃ、そうなんだけど。

剛さんのことも含めて、美乃里ちゃんとはちゃんと距離を置こう、俺みたいな人間が、中途半端に触れちゃいけないって、

今までみたいにからかうのはやめようって、
俺なりに思っていたけど。

いざ少し離れた位置から、自分以外の誰かと親密そうにしている彼女を見るのは、

思った以上にしんどくて。

美乃里ちゃんは、湯前先輩に警戒心なんてきっと一切ない。

彼女が男とあんなに自然に話しているのを見たのは初めてで。

『あいつのこと好きなの?』

そう聞いた時の……あの顔。
忘れられない。

あれはどう見ても、完全に先輩に惹かれている顔だった。