ど、どうしよう。
許可したのは自分だけれど、さらに周りの視線が痛い。
それに、左に座る水牧くんは、今の私たちのこの状況をどう思っているんだろう。
いや、いやいやいや。
水牧くんがどう思っているとかどうでもいいでしょ。
ていうか、勝手に、私は先輩を好きなんだと勘違いされていたし。
……訂正、したい。
今のこの状況のせいでよけいそう思われるのも嫌。
だから……。
「……ねぇ、水牧くん」
小さく彼の名前を呼んだ。
すると、すぐに「なに?」と返ってきた。
そんな声を聞くだけで、胸がドキッと音立てて。
声を発しといて、今更、彼の誤解を解いてどうするんだって考えがよぎってしまい、
本当に言いたいセリフが喉の奥に引っ込んでしまった。
「えと、柚巳が、図鑑喜んでた。ありがと」
「そっか。よかった」
「うん。柚巳ってば、あれ毎日読み聞かせしてってうるさくてさ……」
あれ。
なんで私、会話を終わらせまいと必死なんだろう。



