べつに水牧くんに無視されているとかではない。
むしろ、最初の頃に比べて親切というか、イタズラするときのあのワルい顔をしなくなった。
ただ、必要最低限の会話を交わすだけ。
「月本さん、そろそろ時間じゃない?」
放課後。
先輩の声で家庭科室の時計に目をやれば、もう双子をお迎えに行かないといけない時間になっていた。
「あ、ほんとだ。ごめんなさい。いつも」
「いいよ全然。次は日曜日だね」
申し訳ない気持ちがありつつも、善先輩がいつも優しくそう言ってくれるから、甘えてしまう。
「気をつけて」
「はいっ」
そう返事をしたとき、チラッと水牧くんと目が合ったけれど、お互いにすぐに晒して。
私はそのまま家庭科室を後にした。



