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あれから数日。
水牧くんは本当にパパのお店にパタリと来なくなったらしい。
最後に店に来た日、柚巳に渡してほしいと言って昆虫の本を置いて。
パパから、なにがあったんだと色々聞かれるかと思っていたけど、そんなこともなくて。
柚巳たちも、最初は何度も彼のことを話題に出していたけど、私の反応がずっと薄いからか、
口にすることは少なくなっていた。
アズコンに参加する前の生活に戻ったって感じだ。
そんな元通りの日常をずっと待っていたはずなのに。
胸の辺りはずっとモヤモヤしたまま。
学園祭当日に行われるアズコンに向けて、準備は着実に進んでいるけれど、
水牧くんはあの約束通り私とは明らかに一線を引くようになっていて。
ちょっと前まで口喧嘩したりキャンプに出かけたのが嘘のよう。



