「美乃里ちゃんってほんと、自分の気持ちよりも人の気持ち優先だね」
「え……」
「俺が家に来ること本当はいやでしょ。アズコン以外で関わることも。剛さんや柚巳くんたちがって……」
「それは、」
なんでこんなに胸がざわついているんだろう。
ずっと、一刻も早く彼との関係を終わらせたかったはずなのに。
その次のセリフを言わないでほしいって思ってる。
「さんざん美乃里ちゃんの気持ち無視して邪魔してきたからね。最後ぐらい、嫌な気持ちにさせないようにするから」
夢と、正反対。
「アズコンが終わったら、ちゃんと他人に戻るから」
「……っ、」
何かに押しつぶされたような衝撃だった。
『他人』
水牧くんの言う通り、1ヶ月前まで私たちはそうだった。
なのになんで。
イヤなイタズラされて、憎まれ口叩かれて。
大嫌いだったはずなのに。
もう、同じテーブルを囲んでご飯を食べることがなくなるのかと思うと、
胸がギュッと痛くなって。
それなのに────。
「……うん」
そんな返事しかできなかった。



