「タキシードも種類が豊富だよ。なにがいい?」
善先輩が私物のタブレットでお店のホームページを開いて水牧くんに見せる。
「あー、なんでも大丈夫ですよ。俺、全部着こなしちゃうんで」
なんてヘラヘラした水牧くん。
この人、あの日のことほんと気にしてないんだな……。
いつも通りって感じ。
「そりゃ、水牧くんならそうなんだけどさ、できればなんでもいいはなしで。自分で選んで少なからず愛着湧く方がモチベ的にも大事だし。月本さんも何着か選んでね」
「っ、は、はい……」
「じゃあ、次は……」
ブーブーブー
善先輩がさらに話し出そうとした時、テーブルに置いていた先輩のスマホが震えた。
「ごめんちょっと出るね」
すぐに先輩が通話ボタンをタップして画面の向こう側にいる人と話す。
「はーい、今ちょっと忙し…………え、あ、まじ。わ、ほんとだ。うん、わかった今行く」
そう言ってスマホを耳から離して電話を切った善先輩が私たちに目線を向ける。



