考えないようにと思えば思うほど、心臓がうるさくなってしょうがない。

早く忘れようと必死に萌ちゃんたちの会話に意識を集中する。

「湯前先輩は、彼女いるとか別れたとか、まぁそんな噂は聞くけど、果歩くんと違って、遊んでいるとかは聞いたことないし。話やすいって人気だからさ。実際、どう?いい?」

いや、いい?って……。

「昨日少し話した程度だし、何にもわからないよ」

「えーー」

つまんないと言いたげに萌ちゃんが声を漏らす。

正直今は、善先輩のことよりも今朝見た夢のことで頭いっぱいで。

ほんと、どうしちゃったんだろうか、私。

「まぁまぁ。それで?美乃里たちはどんなテーマで決勝出るか決まったの?」

「さゆ、それ本番の楽しみにした方が絶対いいって!」

「あそっか。今聞いたのはなかったことで!本番楽しみにしてる!」

「応援してるからね美乃里!絶対美乃里たちが優勝だって思ってるから!」

ふたりにそう言われて、昨日、善先輩に言われたことを思い出す。

大切な人たちからの応援……か。

ペアの水牧くんと最後までうまくできるか全然わかんないけど。

ここまで来たら優勝目指して頑張ってみたいかも……。