「美乃里ちゃん」
聴き慣れた声に優しく呼ばれた気がした。
この声は……。
ゆっくり目を開けると、そこにはあの水牧くんが、うちのダイニングテーブルの椅子に座っていた。
なんで、水牧くんがいるの……。
ていうかどのツラさげてうちにあがれるの。
パパがあげたのかな。
いつから私ここに座って……。
「美乃里ちゃんの作るご飯、ほんとうまい」
「え……」
ふわっと笑いながら、水牧くんが私が作ったんであろうハンバーグを頬張る。
幸せそうな顔して食べるんだから……。
その瞬間、自分の胸がキュンと鳴った。
って。なに……今の……そんなの、おかしい。
キュンってなによ。
「ねぇ、美乃里ちゃん」
普段より柔らかい声で私の名前を呼ぶから。
目が合わせられない。
昨日は乱暴に触ろうとしたくせになんで今日はそんなに優しいの。
調子狂う。



