モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。


「じゃあ、俺はこれで。また学校でね、月本さん」

「え、あっ、すみません、ここまで付き合わせてしまって」

「や、俺が勝手についてきただけだから。話せてよかった。弟くんと妹ちゃんの顔も見れたし」

『じゃっ』

そう言って横を通り過ぎたと思った先輩が、突然グッと私の耳元に顔を近づけて来た。

「仲良いんだね、水牧くんと」

「……っ、」

顔をあげて先輩の顔を見れば、不敵に微笑んでいた。

さっき柚巳が言ったことしっかり聞かれてた……。

私の肩をトンと優しく叩いて、先輩は行ってしまった。

……仲良いって、そんなの絶対あるわけないのに。

「ねぇ、おねーちゃん。果歩、昆虫の本持ってくるって言ってたんだけど、いつ来る?」

柚巳の声に、今日、試着室で起こったことがフラッシュバックする。

その名前、今出さないで。

「……来ないよ」

善先輩の背中を見つめながらつぶやく。