「月本さん知らないの」
「なにをですか」
「大切な人からの応援があるとね、人って無理って思ったことでもできちゃうんだよ」
「……っ、」
大切な人からの応援……。
「知らない人たちにたくさん見られてる、じゃなくて。自分を大切にしてくる人、好きな人、そう言う人たちに届けたいって気持ちでステージに立てるとね、全然違うよ」
「……届けたいって、気持ち……」
「月本さん自身は、優勝にこだわらなくていい。その方がきっと自然体で魅力的だと思うから。家族のために苦手なことも頑張ろうと思える月本さんなら、きっといいステージを作れるよ」
「……っ、」
なんだかすごいな、善先輩って。
その道のプロというか。
私よりも2個年上だけど、それでも、その年でそういうことを言えるって……。
「ね、考えてみてよ」
そう言った先輩の笑顔に、自然と自分の口角も上がっていて。
「はい、考えてみます」
そう答えていた。



