そしてふっと笑いながら言ったんだ。

『やっぱ美乃里ちゃんだと興奮しないみたい』

彼の手が離れて、ホッとしたはずなのに。

はっきりそう言われて、傷ついている自分がいた。

水牧くんに触られることはすごく嫌だったはずなのに。

以前とは違う感情になりつつある自分にもものすごく戸惑って、怖くなった。

「ダメだ……お迎え行かなきゃ」

誰もいない教室。
小さく呟いて自分の席から立ち上がった瞬間。

「月本さん」

っ?!

名前を呼ばれた気がして顔を上げると、ドアの方に見知らぬ男子生徒が立っていた。

目線を少し落として彼の上履きの色を確認すれば、ラインが青色。

と言うことは、3年生だ。

え。3年の先輩が一体私になんの用だろうか。

目の前の先輩は、アッシュブラックのマッシュヘアーに少しパーマがかかっていて。

耳には数個のピアスが光っている。