「それでも、私と水牧くんにはそういうの一切ないですからっ」
そう、強く否定した瞬間──。
「なーに話してんの」
フワッと甘い香りが鼻を掠めたかと思えば、ニヤついた声が耳に届いたのと同時に、
その声の主に、肩を組まれてしまった。
「水牧っ!!」
廣瀬くんがびっくりしながら彼の名前を呼ぶと、水牧くんがわざとらしくこちらにものすごく顔を近づけて来た。
「……っ!!」
しっかり肩を掴まれてしまったので逃げることができない。
最悪だ。
「は……離れてよっ」
「いまさらそんな恥ずかしがらないでよ〜。あ、それ俺のじゃん」
水牧くんが、私の持っている袋の中にある紺色のパーカーを指差す。
「昨日の今日でわざわざ返しに来てくれたの?律儀だね〜美乃里ちゃん。今度また家に行った時に持って帰ったのに」
こ、こいつっっ!!
みんなの前で誤解されるような言い方して!!



