……心のささくれが剥き出しになっている気がする。本当に欲しいもの、なんて言われてしまったせいだ、きっと。
 本当に欲しいものは手に入らない。──そんなこと、知っている。別にいい。『黒白の書』を取り戻せれば。
 ふと気づいた。
 なんで明日まで待つ? 今すぐ出発すればいいじゃないか。もう考えることは何もない。
 あれこれ考え、ぐずぐずして決断を遅らせるのは、僕の悪い癖だ。
 暮れていく海の彼方に目をやり、シルフィスは窓を離れた。ベッドに置いた外套を取った。
 ドアを開ける。
 目の前に、リシュナがいた。
 もう少しで叫ぶところだった。だって、生首が自分の顔の前に浮いている。