綺月の顔から、スーっと笑みが消え。
「千柳だけじゃなくて、俺にも教えろよ」
真剣な声を震わせ。
「女を食料としてしか見てこなかった氷牙が、
初めて好きになった子。
俺も気になるからさ」
漆黒に瞳を凛と揺らし
俺の眼球を貫いてきたから
滅多に綺月が見せない表情に、
俺の心が揺らいでしまう。
「氷牙は、みくるちゃんの父親の
借金を肩代わりしてまで、
自分のものにしたかったんだろ?」
そうだけど……
「どんな子なわけ?
氷牙が惚れた子って?」
俺に心を許したような
八重歯キランのやんちゃ顔が優しくて。
綺月になら話していいかもと、
心の天秤が傾いてしまう。
1分ほど、黙りこくって悩んだ末
俺はようやく、重い口を動かした。



