氷牙さんは
私を抱きしめたまま
「やっと、泣いたな」
この上ないくらい、
優しい声をこぼした。
どんな私でも
丸ごと受け止めてくれそうな温かい瞳が
揺れていて
離れると決めた私の覚悟が、
揺らいでしまいそうで、怖い。
氷牙さんは
私の頬に、手の平を添えると
「電車で一目ぼれした相手が、
みくるじゃなかったとしても。
俺の心の中を、今でも独占してるのは、
間違いなくオマエだから」
涙でぐちゃぐちゃな私の目尻に、
優しくキスを落とした。
なぜか
心臓に突き刺さったままの痛みが
スーッと薄らいでいく。
でも、涙は止まらない。



