好きな人からのお願いは、
無下にはしたくないし……
氷牙さんの最後のお願い、
今すぐ叶えますね!
じゃあ私、一泣きします!!
……て。
いやいやいや。
ムリです。ムリ、ムリ。
涙を操るなんて
名女優なみに器用なこと
私には、できませんから!
氷牙さんが
一人ぼっちで寂しい子供みたいに
悲しそうな眼をしていたから
ついつい
言うことを聞いてあげたく
なっちゃったけれど……
「ぽろっと一粒だけ、
涙を流してくれればいいからさ」
「そんなこと……」
「1回だけでいいから」
氷牙さんは、両手を合わせ
「みくるの命がかかっているから。
今すぐ、頼む」
頭まで下げ、私に懇願してきた。
「泣かないと私の命が、
三途の川に、沈められるってことですか?」
わかりやすいくらいの
驚き声を返したのに
氷牙さんは、そんな私を無視で。
「ちょっと待って」
座卓に置いたカバンの中を、
ガサゴソ、ガサゴソ。



