「みくるに……
お願いがあるんだけど……」
アイドルとして堂々とステージに立つ
氷牙さんと、同一人物だと思えないほど
彼の声は、震えていて
氷牙さんが言っていた『人体実験』は
私達の関係を永遠に無にする
『縁切りの儀式』なんだろうなと
簡単に予想がついてしまう。
きっと、氷牙さんに会うのは、
これが最後。
最後くらい
お願いを聞いてあげてもいいよね?
思い出の中の私は『いい女だった』と
氷牙さんの記憶に、刻まれて欲しい。
そんな
未練たらしい欲が、湧き出てきて。
「氷牙さんのお願いって、なんですか?」
私は、顔中のパーツに命令して
一番いい笑顔を作らせ
「遠慮なく、言ってください」
頑張って、声も跳ね上げてみた。
それなのに。
「……」
微笑んだ私と目が合った氷牙さんは、
気まずそうに俯くだけ。



