「じゃあ俺達、着替えてくるからね。
綺月、天音。行こっ」
千柳は、机に伏せたままの俺の背中を
優しく撫でると
2人を引き連れて
二間続きの隣の部屋に入り
引き戸を閉めてくれた。
ほんと、こういう時
ゾルックのメンバーが、この3人で、
良かったなって、心底思う。
だって、こいつらは
俺が今、保って欲しい距離感を
ちゃんとわかっていて。
俺のプライドの守り方も、
ちゃんと心得ているから。
着替えから戻ってきた、天音と綺月。
「僕たち、先に帰ろ」
「ああ。
魔王の命令は、絶対だからな」
爽やかな声を控室に響かせ
「お疲れ様~」
「じゃあな~」
3歳年下組は、出て行ってくれたのに……
まだ一名。
同級生で。幼なじみで。
俺のことを
一番よくわかっているはずの御曹司が
背後霊並みに、
俺の後ろにまとわりついている。
千柳は、俺の隣に座ると
机に伏せたままの俺の頭に
手のひらを乗せた。