組んだ腕に、後頭部を乗せ
呑気に、天井を見上げる千柳。
その横顔を眺め
「そうだったな」と、
しみじみ頷いた俺。
この蜜甘御曹司アイドルは
今でも、つらい過去を思い出しては
顔を歪めてしまう程
記憶抹消能力が、低いんだった。
「でも、記憶力は、ずば抜けて良いよ。
雪那との思い出が、
俺の脳から絶対に消えないように、
日々、鍛錬してるから」
千柳は瞳が見えなくなるくらい
俺に微笑むと。
「でもね……」
急に、表情を一変さた。
千柳が
瞳を悲しそうに揺らしたから
俺の心もざわついてしまう。
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