みくるに投げ返された合鍵を
見つめていると

綺月が、俺に微笑みかけた。



泣きそうなほど歪んだ
綺月の笑顔に

俺の心が、ジリジリと痛む。




「氷牙のツラさは、
 後でいくらでも聞いてやるからさ」


「……」


「控室に入るまでは、
 ゾルックの絶体的魔王を演じきれ。
 なっ!」





何だよ……


綺月まで泣きそうな顔するなんて。

卑怯じゃんか。




プライド的に

3つも年下のガキ綺月に、
情けない自分を見せたくない俺は。



「うわぁぁぁぁ」


ぐちゃぐちゃな俺の心の中みたいに

綺月の髪を、鳥の巣状態にすると




「綺月、へんな髪型~」


「氷牙が、やったんじゃんか!」


「カラスにつつかれる前に、
 直してやるから。
 ほら。頭、貸せ」
 


綺月をいじることで

なんとか、
顔面に笑顔を取り戻した。