「氷牙さんのことが
 今でも好きって……
 ヤバいよね? 私」


「好きという感情は、
 自分でコントロールできない
 悪魔みたいなものです」


「……悪魔かぁ」


「僕も、長期にわたって
 入手不可能な恋の悪魔に、
 とりつかれてましたよ」



総長は

「過去の失恋話しですけど」と、
舌をテヘっと出したけれど

お茶目に笑ったのは、一瞬だけ。




私の肩に、両手を添えたと思ったら。



「総長は、姫を守るもので」


顏から、一切の笑みを消し。




「総長は、姫を幸せにするもので」


私を見つめる瞳に、熱意を宿し。




「高校の時に成しえなかった役目を
 今果たしたい、僕のワガママ。
 姫なら、受け入れてくれますよね?」


私の耳元で、

別人のように男らしい声を
震わせた。