彼の溺愛 致死レベル ゾルック 四人目




驚きで、声が固まる。


聞きたいことは山ほどあるのに、
俺の喉が、声を通そうとしない。




俺たちの間に漂う、数秒間の静けさ。



その静寂を破ったのは

ぼーっと空を見上げるみくるの、
弱々しい声だった。





「小1の時。
 私、初めて
 イチゴのショートケーキを食べたんです」



「貧乏だったから」と、
苦笑いをしたみくるの、涙笑顔に

俺の心が、ギリッとねじり痛む。




「母が買ってきてくれて。
 私、すっごく嬉しくて。
 ものすごく時間かけて、
 ケーキを食べたんです」


「本当に美味しくて」と、
みくるは微笑んだのに

急に、表情を曇らせた。




「最後に残しておいた苺を、
 母にも分けてあげたかったのに。
 探しても、家のどこにもいなくて」


「買い物に行ってたのか?」


「仕事から帰ってきた父に、言われました。
 他の男の人のところへ行ったから、
 もう帰ってこないって」


「……」


「母と食べたかったイチゴは、
 ぐちゃぐちゃに、踏んづけてやりましたよ」



アハハハと、
わざとオーバーに笑い出したみくる。



その姿が、可愛そうなくらい痛々しいのに

みくるの心の傷を治す魔法の言葉なんて、
俺の口から一切出てこない。