もしかして……


心が海のように広い総長の、
逆鱗に触れちゃった?


私の発言の、何がいけなかった?






顔色を伺いたくて

私は急いで、総長の顔を覗き込む。



口を一文字に結び、
苦しそうに窓の外を見つめる総長。



「私……
 怒らせるようなこと……
 言っちゃったかな?」




数秒遅れで顔を上げた

驚き顔の総長と目が合い。



「……えっ?」



見開いた目で、
ハテナを返されたから。



「総長が怒ってないなら……
 良いんだけど……」



私の声は、語尾に近づくにつれ

自信なさげな、小声になってしまった。





「僕は姫に、
 怒ってなんていませんよ」


総長は慌てて、笑顔を作ると。



「姫は、何も悪くありませんから。
 お気になさらずに」


顔の前で
オーバーに手を振りだしたけれど。




「早く席に着けよ~」


担任が教室のドアを開けながら
放った声で

総長とのおしゃべりは、強制終了。



瞳が蔭った
総長の本心が聞き出せぬまま

いつの間にか昼休みになってしまった。